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剱岳行った! ~その3~
夜のテントのことを書こう。

暗闇の中のテントは不安だ。

tsurugi200.jpg

風の吹くごごう、ごごごう、という音にはっと目が覚めて、一瞬どこだか分からず、もしかしたら俺は死んで地獄に落ちたのでは無いかと原始的な不安におののき、それからしばらくして、そうだ、山でテント泊してたんだと思い出す。

そして寒い。
ネルシャツ着て、みの虫みたいにシュラフにくるまっても寒い。
最低気温は10℃を割り込む。

テント場で異常なまでに元気なのは、大学生のワンダーフォーゲル連中だ。
体力に任せてバカみたいに大きな荷物を30人ぐらいで運んできて、快適な環境で寝泊まりして、焼きそば作ったりホットケーキ焼いたりしてて、しかも体力は僕よりもあるというずるさ。この日の若者はキャンプ場でマージャンやったり、ウルトラマンの全身タイツで登山したりしていた。
若さってすごい。

しかしそんな彼らも、あまりに元気過ぎて夜中まで騒いでたら、短気なおじさんに怒られしゅんとなってた。
おじさん、そんなに怒らなくてもいいじゃん、とも思ったが、たしかにおじさんは、夜中まで騒いで寝ずに登山しても平気な歳では無いのだ。この気持ちは若者には分からないだろうか。

さてこの日は立山に登る。

tsurugi210.jpg

赤いルートに沿っての、いわゆる「尾根歩き」だ。
荷物は重いが、気は軽い。
NHKスペシャル「チベットの高原をゆく」みたいな気分で荷物を背負ってぺたぺたと道を歩く。

tsurugi220.jpg

登山が一番楽しいのは、晴れた夏の日の尾根歩きだ。
花とか咲いててピースフルな感じで気分良く楽しめる。
たまにすれ違う登山者のクマ避け鈴が、ちりーん、ちりーん、と鳴り響く。
まさに天国だ。

ただこの日このコースは本当に人がおらず、クマ避け鈴を持っていなかった僕は、熊に出会う可能性が多分にあり、出会ったらどうしようとおびえながらの行程でもあった。

そういう意味でも、この日の尾根歩きは天国への道だった、と言えるかもしれない。


tsurugi230.jpg


さて、残念ながら天気は曇りで、ほとんどこのあと風景は見えなかったのだが、途中一か所すごくきれいに見えたときがあったので、iPhoneを使ってどーんと合成してみた。

tsurugi240.jpg
クリックで拡大

フォトシンス(Photosynth)というアプリで手軽に撮ることができる。
iPhoneを買ってから、登山がさらに楽しくなった。
パノラマ写真もすぐ撮れるし、星座アプリで夜に見える星も教えてくれる。
歩いた行程をGPSで記録してくれるアプリもあって、冒頭に出した「今日の行程」の画像は、その記録を3Dシミュレーターに乗せたものだ。

ちなみにこの3Dシミュレータ、その場から見える風景を再現してくれるので、けっこう楽しく遊べる。

tsurugi250.jpg
フリーソフト「カシミール3D」で作成。

これは上記の写真を、同じ場所から見るようにシミュレーターで再現したもの。
再現度はかなり高い。
じゃあもう山なんか行かないでこれでいいじゃん、と思うかもだけど、それを言われると返す言葉がない。
いや、でも、実際に行くと雷鳥とかオコジョとかいて、もうちょっと楽しいしさ。

tsurugi260.jpg
花も咲いてるし。

実際、剱岳で僕はオコジョに出会った。
山小屋のお姉さんにそのこと話したら、それは珍しい、オーナーの家族でも年に1回ぐらいしか見ない、と言われてすごく嬉しかった。
初めて見る野生のオコジョは、両手に乗るぐらいのサイズで、あり得ないくらいラブリーであり、すっかり虜になったのだが、帰ってネットで調べると「自分より大きいネズミを食べることもある獰猛な性格」と書いてあり一気に目が覚めた。
この心の揺れ動き、恋愛経験の少なかった十九、二十歳の頃に似ている。

さて、登山も終盤、立山の頂上から黒部ダムを眺めつつ、登山口へと降りていく。
このコースは激しい上下も無く、初心者でも楽しさを満喫できるんじゃないだろうか。いいコースだった。

tsurugi270.jpg
頂上(大汝岳:おおなんじたけ)から眺める黒部ダム。岩山もかっこいい。


tsurugi280.jpg
頂上(雄山;おやま)の立山神社。


雄山まで来ると急激に人が増えて、めちゃくちゃびっくりした。
さっきの尾根歩きしているときの秘境感とうって変わって、ギャルっぽい若者の集団がいたり、小学生の集団を引率してる張り切ったおっさんがいたり、街中と余り変わらない状態である。

富山の人は、茨城における筑波山と同じ感覚で立山に来るらしい。
というわけで日傘をさしたおばちゃんとか追い抜きながら登山口へ。

tsurugi290.jpg
到着、室堂ターミナル。ただいま、文明ゾーン。

いつも文明ゾーンに帰ってきたな、と思わせてくれるのは揚げ物の香りだ。
レトルトが発達した今、山でみんなだいたい何でも食っているが、揚げ物はさすがにできない。
なので、あの香りをかぐと「ああ街中だな」と思わされる。

せっけんで思い切り顔を洗い、ソフトクリームを食べ、文明を味わっていると、遠くにカメラを持った人の人だかりが見えた。
何だろう、と思って近寄ってみると、そこにはオコジョがいた。


話が違う。


しかしそれはまごうこと無きオコジョで、自然観察員の人が言うには、「人慣れしててあまり逃げないんだよねー。肉食べてるとよく寄ってくるよ」とのことだった。
オコジョは10分ばかり愛想を振りまいて山へと消えていったが、剱沢小屋のお姉さんには熱烈に抗議を申し入れたい。

tsurugi300.jpg
しかも僕がカメラを持ち出したら山に逃げていったのも悲しみ深い
(写真はウィキペディアより)



とまあ、こんな感じで今回の登山は終わり。
山に登らなくても、黒部立山アルペンルートだけでも、ダムは見れるし、室堂ターミナルから見る風景もきれいで価値のあるルートだなと思う。

剱岳についてもっと知りたくなった場合は「剱岳・点の記」という映画が有名なので、ぜひぜひそれもご覧になって下さい。

~おまけ~
tsurugi310.jpg
剱岳の雪渓に落ちていた剱。

このネタ、僕もやろうかと一瞬考えたが、こうやって容易にかぶっているところを見ると、ボツにしてよかったと思う。


~その1~はこちら
~その2~はこちら

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【2012/09/02 12:58】 | 研究室旅行 | トラックバック(0) | page top↑|
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